第21話

時間を忘れて他愛もない話をした。


まるで中学生の会話のようだったが、合コンなどで会った男たちのように、腹の探りあいをするような会話はひとつもなかった。


「わ! もうこんな時間!」


『あ、ほんとだ。ごめん! 明日起きれる?』


「大丈夫!」


『早く寝てね、ごめんね』


「松本さんは大丈夫?」


『うん、明後日の夜までオフ』


「いいなぁ」


『ごめんね……ついつい』


「ううん……楽しかった……またお話してください」


一瞬途切れる。


『いきなり……会いたいって言ったら……ひく?』


「え!」


『……あのさ。洋食店で……お皿下げてもらう時ちゃんと『ごちそうさま』とか言ってたり、今日のホームパーティでもグラス片付けたり……いい子だなぁって思って、話してて楽しかったし会いたい……なぁって』



明日7時に洋食店で、と待ち合わせをすると電話を切る。


ヒロキはふふふっと笑った。


「すげえ、うれしい」


ゆるんだ口角を隠すようにパンパンと頬を叩くと飼い猫のアビシニアンを撫でた。


ヒロキの周りには、沢山の美しい女がいる。


モデル、女優、タレント……自分と同じ世界の女の子でも、いい子はいて友達だったりもする。

食事をしたり酒を飲んだりするが、ヒロキが淡白なのか博愛なのか相手がそうなのか? それ以上でもそれ以下でもない。


だが、その他の子もヒロキの事を松本寛貴とは誰も思っていない。

野田寛貴として、自分の損得だけを考えて接してくるのだからこういった淡い感情が生まれるはずもない。

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