第20話

「は、はい!」


『いま、平気ですか?』


「はい、大丈夫」


『今日は……ありがとう』


「そんな! お礼を言われるような事は何にもしてないです!」


『あはは! そんなことないよ、相手してくれて楽しかった』


短い沈黙が流れる。


「……今テレビをつけたら、松本さん出てました」


『あ、そっか。うん』


「なんか、こんな有名な人と普通に会話して馴れ馴れしくてすみませんでした」


『ううん、むしろ嬉しかった。こういう仕事してるから、特別扱い? されるの慣れたけど……やっぱり、普通にしてくれるとうれしいから』


リカはなんだか切ない気持ちになった。


マキの家を出て、途中まで一緒だった友人達は、散々他の男に自分アピールをしていたにも関わらず、ヒロキと撮った写真をリカに見せながら「あの、野田寛貴だよ!」と騒いだ。


友達、知人でいたいけれど決して恋人候補にはならないし結婚なんてとんでもないと笑いあったのだ。


「……松本さん、普通の人だったよ?」


「松本? 野田寛貴って芸名なの?」


「そういえば自己紹介でそんな名前言ってたかも」


「バカね! 男は安定よ、安定なら公務員!」


「安定って……職業と結婚するワケじゃないでしょ」


「それも含めての結婚よ」





ヒロキは自嘲気味に笑って言った。


『……春日さんと、もう少し話したかったなぁって思って……迷惑だったかな?』


「全然! 私も話したかったから……うれしいです」

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