第10話

「助かりました、ありがとうございます」


「……いいえ」


 聞き覚えのある声に視線をあげずに返事をする。


「ご注文は?」


「カフェオレと冷製カルボナーラ」


好きな声だ。


どこで聞いたのだろうか? 最近聞いた気がする。リカはクラブハウスサンドに手を伸ばしながら顔をあげてみた。


「あ」


思わず声が出た。


男も顔をあげた。


「あ!」


「……あ、本は無事に借りることができました」

「よかった」


リカはこれ以上お喋りをしては迷惑だろうかと考えてパクンとサンドイッチを頬張った。


カフェオレを嬉しそうに受け取った男は、ゆっくりと口に運ぶ。


「ここのカルボナーラ食べた事ありますか?」


男は微笑んだ。


「はい! あります。ここのお店はどれを食べてもハズレがないんです」


「うん。そうなんですよ。仕事で色んな土地に行くんで、色んなお店に入ったりするんですけど……この店は本当にはずれなし。カフェオレもお代わり自由だしね」


あはは、と笑った男の笑顔にキュンとする。


干物になりそうなほど恋愛から遠のいていたせいだろう。こんな単純な事で動悸がするなんて末期だ。と思って2つ目のサンドを手に取る。男にもカルボナーラが運ばれてきた。


男はなんとも美味しそうに食べた。


「お皿さげていい?」


「あ! はい。ごちそうさまでした」


「いえいえ……そうそうロールケーキ、帰りに忘れず言ってね?」


「あ、はい。ありがとうございます」


そう返事をしてカフェオレのオカワリを貰うと男と目が合った。


「あ!」


「?」

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