第6話

「この本……俺は週明けに返すから、予約したらどうかな?」


男は思い出したようにいった。


「そか。うん、そうですね! そうします」


何度も頷いて貸し出しカウンターに向かった。


リカが予約を済ませると、男は安心したように笑った。


「じゃ。先に読みますね」


「あはは! はい」


黒縁眼鏡の男は爽やかに手をあげて、図書館を出ていった。


これが『出会い』なのだろうか?


だとしたら、チャンスを無駄にしたような気持ちになりながら大きな公園をブラブラと歩く。


そんなに上手い話はないだろう。


缶詰なんかから出てきたメモを信じて行動行動するなんてナンセンスだ。


苦笑してマンションに戻ると、上等のコーヒーを淹れてソファに座った。


何でもない休日も大事だ。


夕方に缶詰のクラムチャウダーを開けて牛乳でのばすと冷凍ストックの米と簡単なサラダで食事を済ませる。


のんびりとした休日だが、この時ばかりはいささか寂しさを感じる。


やはり食事というのは誰かと摂るほうが美味しいのだ。

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