第5話

「……この2つをやればいいのね……怖いからやっとこう」


紙を綺麗に畳んで手帳に挟むとシャワーを浴びた。



翌朝。紅茶を飲むと図書館へ向かった。


バカバカしいと思いながらも、それを破る気にはなれなかった。


人間と言うのは単純だ。いい事があるかもしれないと思うだけで、楽しく足取りも軽かった。


休日の図書館へ着き、ミステリーのコーナーへ向かうと棚を見上げて歩いた。


図書館の匂いは落ち着く。


目当ての本を見つけると踵をあげて手を伸ばす。


「あ」


同時に誰かの手が本を引き抜く。

ベタな昼ドラマのようなシチュエーションだ。


「もしかしてこれ?」


男は見覚えのある顔だったが思い出せなかった。。


「ええ……貴方も」


「うん……ちょっと仕事で必要で。でもキミが先に借りようとしてたんだから、どうぞ」


「あ、大丈夫。私は仕事とかじゃないし、お先に」


「でも」


「全然気にしないでください」


リカが首を振ると男はふっと笑った。


「じゃあ、遠慮なく」


男の黒縁の眼鏡の奥でフニャリと歪んだ瞳に心臓が跳び跳ねた。

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