第3話

「そんな店なかったわよ」


「靴屋と喫茶店はあったけど……その間は店どころか人が入れるスペースもなかったもの」


「まさか」


翌日、会社の同僚に話した。同僚は帰りに大通りを2回も往復したが、それらしい奇妙な店は見当たらなかったと言う。


「そんなはず」


「リカったら寝ぼけてたんじゃないの?」


同僚はケタケタと笑った。


リカは腑に落ちないまま残業を少しだけすると会社を出て、大通りへ向かった。


すると、やはりこの前と同じ場所に店があった。


「やあ」


そういいながらアネモネは笑った。


「缶詰はあけた?」


「……まだ……ですけど」


アネモネに歩み寄るとゴクリと息を飲み込んだ。


「……友人がこの店を探したけど、見つからなかったって」


レジの置いてある小さなカウンターに戻るとアネモネはレトロなカップにコーヒーを注いだ。


「どうぞ」


「……」


「この店は風が連れてくる。だからお友達は着けなかった」


「意味不明だわ」


「簡単な事だよ。選ばれてないから見えない。それだけ」


サラリと言ったアネモネはコーヒーをコクリと飲んだ。

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