第2話
男とも女ともつかない店員が顔をだした。
「これはレアもの!」
「これ何の缶詰ですか?」
紙袋に缶詰を入れようとして手を止めた。
「彼の缶詰」
「……」
曖昧に笑ってみせる。
「今、ウザ! と、思った」
「え!」
完璧に心の内を言い当てられたリカは仰け反るようにして店員を見た。
店員は、ふうっと息をつくと大袈裟に首をふった。
「会社の先輩と婚活パーティに行ってガッカリしてた」
「な!」
「先日の合コンでもサラダや鍋を取り分けるだけの係だったと……」
「……」
「缶詰には出会いが入ってるよ」
「……出会い? 」
「開けるも、開けないも。決めるのは自分次第」
リカは気味が悪くなって500円玉を置くと出ていこうとした。
「おっと。忘れ物」
「あ! ああ」
「それから、こちらも」
ショップカードのような名刺を差し出す。
白い花が描かれた小さな紙にアネモネと印字してある。
「白いアネモネの花言葉は希望。別名ウインドウフラワーっていうんだよ。風がお嬢さんを連れて来たんだよ……ボクは店長のアネモネ、よろしくね」
「え。ええ」
リカは紙袋を受けとると逃げるように店を出た。
振り返ると煌々とついていた明かりが消えた。
彼缶ウリキレ
いつ貼られたのか、ドアにはそう書かれた紙が小さく風に揺れていた。
「変な店」
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