1、彼缶アリ〼

第1話

その奇妙な店は、大通りに面した雑居ビルの隙間にあった。



彼缶アリ〼(マス)

貴女ノ御希望ガ叶ウデセウ



縦書きの達筆な文字の紙は、紙の端が少し破けて風にハタハタと小さな音を立てた。


通りを行く人達はその店を気を止める様子もない。


中を覗くと、アンティークな家具や雑貨が見えた。

大きな籠に【籠ノ中全品500圓ナリ】と書かれているのが見える。


最悪、あの籠から適当な物を見繕って500円を払って出てくればいい。


軽い気持ちでリカはドアを押した。


どこかの城にありそうなテーブルや猫足台の洗面器、刺繍の施された刀が飾られてたりと、和洋折衷何でもありだ。

高齢な店主の道楽でやっているのだろう、そう思いながら店内を見て回った。


だがどれも値の張るものばかりで手が出そうにない。


辺りを見回し小窓から見えた籠を覗くと、ゴロゴロとラベルのない缶詰が入っていた。


「缶詰?」


掘り出し物があるかと思ったものの、アテが外れたのとホッとしたので適当な缶をひとつ取り上げてレジに出す。


「すみませーん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る