第17話
「さあ。どうかな?」
「何だよ、素っ気ないなぁ……美人だし、いいだろ?」
「少ししか話していないしな、解らんよ。まあ……ほかのご婦人よりは心根がいいだろうと想像はつくがな」
「素直じゃないな」
「素直……そうだな、俺は捻くれてる」
無邪気で素直なサムが羨ましかった。本当の所、リリーの事は気になってしょうがなかった。
少年のように淡い青臭い感情がくすぐったかったのだ。
本音を吐き出さない俺を見て、サムはまた不服そうに俺を見て鼻をすすった。
「ジェイ。明日、散歩行けよ」
「なんだよ? おまえ、今日は変だぞ?」
サムはハッとすると、俺を見ていつになく悲しげな顔をしてみせた。
「ジェイのお守りも、大変だからね」
「それは、こっちの台詞だ」
「いつまでも、ボクがこうやって傍にいるとは限らないんだよ」
「そんな事言って」
「そんな事言うさ、ジェイは自分で思っているより、ずっとずっと素敵なんだよ。早く気が付くべきだ。ずっとボクが言い続けてるのにさ、なかなか納得しないって言うか? だからお守りは大変だって言うのさ」
「そりゃ悪かったな」
サムはベっと舌を出して言い返した俺の顔を見てクスクス笑うと毛布を引き寄せて、午後の微睡へ落ちていった。
俺も、サムの規則正しい寝息につられるように、夢の中へ入っていったのだった。
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