第16話
「そんなこと言って、……おまえは俺がご婦人と親しくすると不機嫌になるじゃないか」
「それは、顔に軍人の妻になりたくて男を漁っています! って書いてあって脳味噌の中は財産と性生活でいっぱいな女の臭いがたまらないからだよ」
鼻を摘まんで眉間にしわを寄せると、大袈裟に片方の手で空気をかき回すように扇いで見せた。
「ジェイは判らないのか? あのメスの臭い。悪魔の儀式で使う捧げもののほうがよっぽどいい香りだよ。あれは最悪だね」
「ははは! そりゃ困ったな。悪魔の儀式を知らんので何とも想像出来んがきっと史上最悪の香りなのだろうな」
「そうさ。ボクは鼻がいいからね」
顔をしかめたままサムは熱弁するように言った。ふわふんと俺が頷くと、横になったまま続けた。
「でも……ボク。リリーならいいよ。あの子はいい香りがしたよ。なんだろう?」
サムはうっとりとして続けた。
「優しい匂いだったよ。なんとも懐かしい、そんな匂いだよ。だからさ、ジェイとリリーが寝たとしても、きっと怒らないし……むしろ嬉しいかも、あんな綺麗な女の子は久しぶりに見たよ。絶対処女だし」
「さっきから、処女にこだわるな。それ、そんなに大事か?」
「いや、別に。そもそも貴族なんて世間体では処女だって事で貞操云々騒ぐけど、大抵の女も男も処女でもなきゃ童貞でもないだろ?」
サムの言う事もあながち間違いではない。
「でも、あの子は100%処女だよ。だからなのかな……なんか……壊してみたくなるっていうか、誰も開いた事のない世界を開く悦に浸りたいのかもね……まあ、ボクには出来ない事だから、ジェイに託したいのさ」
「……大役だな」
「ジェイだってリリーの事満更でもないんだろ? 口説いちゃえよ」
俺は合わせのバスローブのよう病床着を脱ぐと椅子にかけて、ベッドにもぐった。
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