第15話
「断る」
「なんでさ! 昔は何でもお揃いだったろ?」
「……サム。俺にはこの格好が似合いだ。案外、この髪型も気に入っているんだ」
サムのこんな不服そうな顔を見たのはいつぶりだろうか?
サムは俺の髪を指で遊びながら背中にもたれた。
「ボクと……お揃いはイヤなの?」
「そう言う事を言ってるんじゃないんだ、わかるか? お前は美しいが俺は美しくない、それだけのことさ」
「ジェイは男前だよ?」
「よしてくれ」
「舞踏会なんかでも近づきがたいだけなんだ。何ていったって愛想ないもんな。顔はいいのに何故か怒ってるように見える。ジェイはさ、ブタみたいな奴や、モンスターも逃げ出すような奴が山ほど居る中で相当に綺麗な顔立ちだよ! だからきっとさ、もう少し髪を伸ばして色気を出したらモテモテだよ」
そう言いながら、俺の耳朶をペロッと舐めた。
「サム!」
「……こうして髪をかきあげることもなく耳や首筋に噛みつく事が出来るのは素敵で合理的だけどさ、こんな短い髪じゃ色気ないじゃないか」
「やめろ」
「もう戦はおわったのに」
寝癖のついているであろう、旋毛の辺りの髪を撫でつける様にしながらサムは首筋に顔を埋める。
「よせよ」
「でも……この襟足はそそるんだよね。首の太さが際立って色っぽいんだよ」
「男なんだから、色気なんかなくていいんだ」
「だからって、そんなに短くしなくてもいいじゃないか」
「軍人だからな」
「はぁ。何いってるんだよ、貴族の子息ともなれば、もう伴侶を見つけて子を授かっている者だっているんだぞ、ジェイはそんなだからホモ呼ばわりされるんだよ」
サムは呆れた口調でそういいながら、先のとがった靴を脱いで足を伸ばしベッドに横になった。
ヒラヒラとしたシャツの袖口は百合の花のようだと思いながら見た。
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