第6話

「お茶はいかがかしら? お飲みになれるかしら?」

「ああ。頂けるだろうか? ……失礼ついでに、名をなんと申うされるのか」


「あら、わたくしったら……名も名乗らず不躾でしたわ。……リリーと申します。リリアン・グランディア。リリーと呼んでくださいませ」


「リリー……リリアン。美しい名だ」


俺がそういうと、長椅子でサムが笑う。


「ははは! ジェイが女の名前を誉めるなんて珍しいな、うーん、しかし自分は名乗らないなんて失敬だな。ご婦人に名乗らせておいてさ」


俺ははっとして顔をあげた。


「それもそうだな……ご婦人に名乗らせておいて失礼した。俺は、ジュリアスだ」


「ボクはサムだよ! よろしくね!」


「ジュリアス様……ですか。英雄の名ですわね、素敵だわ」


「いや。そんな大層な……ジュリアス・トルメインだ。……たいていの者はジュリアスの頭文字でJ(ジェイ)と呼ぶが、呼びやすいようにしてくれてかまわない……それに年もいくつも離れてはいないだろう?」


「わたくしって……いくつに、見えまして?」


突然の質問に俺は戸惑った。


サムはクスクスと笑いながら「20はいかないぐらいかな? 18か19か。でも、彼女まだ男を知らない顔だよ! 美人で処女なんて天然記念物だよ! お買い得! 早くしないと売れちゃうよ」と俺の耳元で囁く。



俺は横目で一瞬サムを見て言葉を慎めと言う視線を送りながら首を傾げた。

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