第14話
そこには年甲斐もなく花柄のエプロンをつけたキヨさんではなく、コーヒーがサイフォンされていくのをぼんやりと眺めている長身の男性がこちらに気が付いてペコリと頭を下げた。
「あ。おはようございます」
「ええ、ああ……おはようございます」
「どうも」
「どう……も。って、どなたですの? け、警察! 大変! 警察!」
ルリは履いていたスリッパが脱げて転びそうになりながら電話機へ駆け寄った。
「ま! 待って」
「待ちません! どなたか存じませんが、どうやって入られたの? 不法侵入というのじゃありませんの? 警察を呼びます。あ。そうだ。コンシェルジュ」
「待ってください。オレ。ああ……えっとアネモネからここへ来るように指示を貰って来ました」
「……アネモネ」
ルリは受話器にかけた手を放して男に向き直った。
「今。アネモネ。と、おっしゃったの?」
「はい、女性の寝室に入るのはいかがなものかと思ったのでここで待たせてもらいました」
どうやらこの男性にはいくらかでも礼儀というものがあるらしい。
ルリは、ふう。と息を吐いて務めて冷静に言った。
「申し訳ないけど、そのコーヒー。私にも一杯いただけるかしら?」
男は頷くと淹れたてのコーヒーをディッシャーにあったカップに注いてルリに出して言った。
「どこから説明を」
「どこでも結構よ、……でも、そうね。まず、貴方の名前とアネモネについて。貴方が存じてる事を聞かせていただけるかしら」
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