第7話
「まあ、かわいらしい」
からくり式のオルゴールは綺麗に陳列されていて、そこだけが別空間のようだった。
ルリはさっきみたショーウィンドウのような箱型のからくりオルゴールを手に取った。
ルリの小さな掌の上に載ってしまうほどの大きさの箱の中では、優し気なメロディーに合わせてウィンドウを鞄や靴で綺麗にディスプレイしていく紳士が背を向けて仕事をしている。
「ふふ、働き者なのね」
ルリはそう呟くとそのオルゴールをキャッシャーへ持って行った。
「すみません。こちらいただけます?」
「はーい」
店の奥から、男の子とも女の子ともどちらともつかない店員が現れた。
体にフィットしたあまり着心地がよさそうな素材とは言えない近未来的なファッションに白衣という謎の格好で出てきた彼か彼女はルリを覗き込んで笑った。
「お会計」
「あ。はい、これをお願いします」
「ふうん、おねえさん、いい趣味してるね」
「そうかしら、どうもありがとう」
「あの棚が探せたんだ」
「え?」
ルリが首をかしげるとクスと笑ってオルゴールを箱に入れた。
「あ。簡単な包装でいいです……? カレ、缶? 彼缶?」
彼だか彼女は勢いよく振り向いた。
「それ、見える?」
「え? ええ。見えるわよ? 彼缶って何かしら。猫缶の仲間?」
「それ、おねえさんに一個あげるよ。それはね、必要な人にしか見えない缶詰なんだよ」
「必要な人にしか?」
「そう。 ボクからのプレゼントだよ。おねえさんにはきっと必要だと思うよ? 説明書は中に入ってるから」
「……ボク」
「ああ。そっか、ボク。ここの店の店長。アネモネって言うんだ」
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