第5話
「ルリ、今日は少し飲みすぎなんじゃない? 車を呼びましょうか?」
「いいわ。大丈夫よ。歩いて帰るわ」
「でも」
「有紀は、サトルさんのお宅へ行くのでしょ? 明日は3限からよ、遅刻しないようにね」
「ふふ。わかってるわ。でも……ルリ、やっぱり車呼ぶわよ?」
「歩きながら、少し酔いをさますわ。そして、ちゃんと家に着いたら連絡入れるわ?」
「……」
「もう、有紀ったら心配性ね。私、これでも最近地下鉄にも一人で乗れるようになったのよ? それにね、夜の街のウィンドショッピング、ちょっと素敵じゃない?」
「……わかった。本当に気を付けて帰るのよ?」
「ええ」
有紀に手を振るとルリは歩き出した。
閉店した店のショーウィンドウで着飾ったマネキンや、綺麗にディスプレイされた鞄や靴を眺めて歩いているのが楽しかった。
「ねえ、彼女。一緒に飲まない?」
不意に声がかかって、一瞬驚いて立ち止まる。
だが、考える間もなく首を左右に振って答える。
「ごめんなさい」
「ッチ」
舌打ちをされた事に驚いて振り返ってみたが声をかけてきた男の姿はもう雑踏に消えていた。
ルリはその人波をぼんやりと眺めて思った。
こんなにも沢山の人間がいるのに、どうやって自分の運命の相手を見つけられるというのか。
自分は恋に恋をしているだけのお子様に過ぎないのだと、頭ではわかっている事実を受け入れなくてはいけないのかと溜息をついて歩き出した。
「あら? こんな所に、お店あったかしら?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます