第8話

「家まで送るよ、また虫につかれても困るだろ?」

「そんな何度も……でもありがとうございます」


太陽と月の時間の境い目、逢魔時。


「この時間は、交通事故も多いんだ、人攫いや通り魔なんかもね」

「あ、聞いた事があります」


彼はふっと笑って前を向いた。

しっかりとした肩幅や首筋に男の人を感じる。


この人の背中、嫌いじゃない。


思わずもたれかかりたくなるような広い背中を見ながら、こんなことを思うんだから、母にフシダラな女だと思われてもしょうがないのだろう。


何かを聞きたいのに聞けない、そもそも何かとはなんだろうか?

家の前について愕然とする。


「あ、ありがとうございます」

「こちらこそ、チョコレートありがとう、あとシナモンロールも」

「いえ……えっと、じゃあ」


なにもできない、なにも言えない自分にがっかりしながら門扉に手をかけた。


「ねえ」


その声に振り替えると彼はニコッと笑った。


「……今度」

「えっ?」

「公私混同と言うか職権乱用だと、思われても仕方ないというか……」


私は首をかしげた。

彼は菜にかに苛立った様子で話した。


「ああ。何て言うか……今日とはいわないけど、その……今度飯にでもつきあってもらえないか?」

「……飯?」

「け、警察の寮に住んでるんだけど……日曜は、寮母さんが飯を作ってくれなくて……泊まりとかだといいんだけど。たまたま休みだったり早く買えると……その」


首の後ろに手を当てて 瞳をあっちこっちに忙しく動かした。

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