第4話
婦人警官はあのお巡りさんにお礼を言えなくて落ち込んでると思ったのか、私の背中をポンポンと叩いた。
「本当は言っていいのか解らないけど、水島巡査は坂ノ下の交番にいるから気が向いたら覗いてみるといいわ」
「坂ノ下の交番」
私から聞いたって内緒よと言って彼女が部屋を出ていくと入れ替わりに両親が入ってきた。
「ミク! 変なことされなかった? 大丈夫なの?」
「あ、うん」
変な事ってなんだろう? ケガとかの心配でなく貞操を気にしているんだろうが、その貞操も私を案じてでなく世間体を気にしてのものだというのは解りすぎて吐き気がした。
「こちらのお巡りさんが助けてくださったって言うじゃない、その方が通らなければアナタどうなってたか……はぁ」
よよよ。っとメロドラマのように顔を覆って泣く母の肩をポンポンと叩いて宥めるように父は言った。
「本当に何もなくてよかったよ」
本当に、うちに迷惑がかからなくてよかったよ。と、言いたいんじゃないかと思いながら少し微笑んで見せる。
「そうね、パパ。ママもごめんなさいね、心配をかけて、でも、大丈夫よ」
この人たちはドラマが大好きだ。しかも安っぽい昼ドラマ以下のメロドラマ。
そんなことを思いながら、今日は理想的な良い娘を演じていた。
馬鹿馬鹿しい。
いっそのことあの男に殺されてしまえば良かったんじゃないか? とさえ思ってくる。
警官はフムフムと頷いて「素敵なご両親だね」と言った。
「ええ……本当に」
私がそう返すのを見て母親は満足げに口角を上げた。
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