第3話
警察署で話をして、温かいお茶を貰うと気持ちが落ち着いた。
「ご両親がお迎えに来るそうよ」
「そ……ですか」
婦人警官はやわらかに微笑むと言った。
「水島巡査は非番だからって簡単に書類出して寮に帰ったみたいよ」
「あ……お礼言いたかったな」
「顔はいいんだけどねぇ。変わり者だから」
「変わり者……ですか」
「そう。まぁよく言えばストイックって言うの? マジメなのよ。でも、ここだけの話。女に興味がないんじゃないかっていうのよね。笑ったところも見たことないし」
言われたい放題だな。と、思いながら苦笑する。
どんな顔だったか、あんまり覚えてないけど。ともかく落ち着く声のトーンだったのは覚えてる。
「警察官だからかな」
ボソっと呟いて机に伏せた。
「あの……元彼はどうなるんですか? ヤダな……また」
「うーん。たぶん、ちょっと措置入院になるんじゃないかしらね? さっきご実家と連絡がついたけど」
「そっか」
元彼の実家は田舎の名士だとかで、出来の悪い彼を煙たがっている様だった。
それがこんな事件を起こして実家に帰って来るとなると、世間体が悪いったらないだろう。どうなるのだろうかと、少しだけ元彼が不憫な気持ちになった。
行き場所もなければ、帰る場所もない。
そんな寂しい人間がこの世の中にはどのくらいいるのだろうか? そう考えると悲しくてしょうがない。でも、それが現実で、みんな何かしらを抱えて生活をしてるんだろうと思った。
私だって、そうだ。
出来のいい兄は実家の病院を継ぐべく医大をもうすぐ卒業する。
私は、いい大学に入ったわけでもなく、見合いにも応じず。あげくストーカーに追い回されるようなゲスな女に成り下がった。と思われているのだ。
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