第4話

私は尻餅をつくように乾いた砂の上に座るとオースケを見上げた。



「……」



オースケは真剣な顔をして私を見下ろす。




「怒ってるの?」


「当たり前だろ! オマエわかってんの?」



私は海に視線を戻すと小さな声で言った。

波の音に飲み込まれてしまうほど、小さな声だ。



「……月が」


「え?」


「月が綺麗で……捕まえたかったの」



オースケは私を黙ってみていた。


頭のおかしい女だと思ったに違いない、そう思われても仕方ないと思った。



「……あれは、オマエのもんじゃねえし、俺のものでもねえ、だからってほかの誰かの物でもねえ……捕まえられねえよ」



強ばっていた表情が、ふっと崩れる。


大きな身体を曲げて私の腕を引き上げて立たせた。



「もう少しで、ここも海になる」



堤防のコンクリートブロックに上がってくると、夜と海の境目がわからなくなった。



オースケは私の横に座るとスポーツバッグからタオルを出して足を拭き始めた。


「!」


「動くなよ」



砂を払うように両足を拭き終わると笑う。



「オマエ、バカだろ」


「!」


「夏は終わったんだぞ。早く靴下履けよ」




私は背負っていたリュックから靴下を出すと黙って履いた。

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