第5話

びちびちびち!


私とふれあいたいという彼の希望にこたえるべく帰宅したあと、部屋で


あさめの水槽にうつした片口君に、私は手を伸ばした。


びちびちびち!


片口くんは嬉しさと息苦しさの両方でのたうち回っている。


「だ、大丈夫?」


「ゼェハァ。お前を、抱き締めたい」


かっこいい……





 クラスの男子にも、お父さんにも、アイドルにだってこんな魅力を感じたことはない。


片口君にメロメロだった。


びちびちびち!

片口君は跳び跳ねながら私のもとへ向かってくる。海に住むボディなだけあって、陸用ではないそれを懸命に、私のために動かす。



ごめん……

いけないってわかってるけど、ドキドキしちゃうよ。


誰にも内緒。危険な恋。

「やっぱり、身体が心配だよ。いつもの場所に戻ろ?」


私はハッと我にかえって、専用水槽にまたうつす。

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