春便り2

第15話

7p


「みてみて!新作が出来たみたい~。」

黄色い帽子の大学生だろうか・・・カップル連れである。

新作の前で、わいわい。

さすがにお昼とあって、熱い珈琲を頼む人の数を、数えてみると、5名。5名でも、騒がしい雑貨喫茶店【キラシルン】。先ほどのカップルの名は、沢田南奈(さわだ なんな)と緑川修平(みどりかわ しゅうへい)で、市内の大学の二回生である。南奈は、茶髪にメッシュのシルバーを入れて、赤い買い物籠を下げ、彼のポロシャツの袖をひっぱっている。このところ、判子ハンカチの売上は、ギフト用に30点、個人用に40点と・・・これ、四か月の売上で、当の本人も、「きゃー、なんか、凄い、嬉しい。」とこの前、叫んでいた。

「あー、もう、うっさい。」

「これなんか、アンナ(南奈の妹 中学三年生)の合格祝いにちょうど良くない?」

「アンナちゃん、トリ、嫌いじゃなかったっけ?」

「えー、可愛いのにっのにっ!・・・じゃー、これは?これなんかどう?」

「箸置き?」

「カエルのガラスみたい、これにしよう!」

南奈達は、カエルの箸置きを黒い袋に入れてもらい、【キラシルン】を後にした。外は暑い・・・梅雨時分の空気の湿っぽさ。

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