第8話

彼は珈琲の妖精っぽい何かである。器に絵付けをしながら、考えていると、携帯が鳴った。

<今日、キラシルンのチーズケーキ三種の試食会! by 田山観世>


「あー…美味しそう…。」

観世は、雑貨喫茶店【キラシルン】にて、会計のアルバイトをしている。此処のチョコレートケーキには、ブルーベリーとラズベリーのチップが入っていて、美味。私は汚れた手袋を外して、新しいのに付け替えると、20枚目の中皿に、また絵付けの筆を走らせた。この中皿は、【キラシルン】のシールを貼れば250円の商品になる。

<アルバイト…チーズケーキ欲しいなぁ…。あと5皿絵付けです。 by木村美菜>


観世はざくざくとチーズケーキの皮部分を切った。このチーズケーキは普通、底にある固いクッキー生地で、チーズケーキ全体を覆い隠す様に、チーズケーキの殻みたいになっている。

「わ、とろって何かチーズが出てきました。」

「本当、不思議…香りが…ブルーベリー??」

ほわほわと湯気がたって。

その上に生クリームを、どかんとのせるんですよ…私は、大量の生クリームのストックをヘラで、観世達の皿に盛っていく。

「頂きます。」

ほふほふと、観世は食べる。

「ん…んん?…美味しいっ。」


「めっちゃっくっちゃ、売れそうです。」

観世は人指し指で、唇に付いた生クリームを拭った。

「本当、美味しいっ。」

木村美菜は、珈琲カップに盛った生クリームを、がぶ飲みしてせきこんだ。

食後。

チーズケーキの試食会に参加したそれぞれを、駅まで送ると、私はチーズケーキの保湿の為に貯蔵庫を開いた。ちょうど5時半で、マンションの近くを通ると程よい木々の音が聞こえてきて、日和がいい。観世は、部屋の椅子に座って、次のシフトを組んでいた。

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