第7話

「そう、じゃ、駅まで送っていくよ。」

私は、髪を縛ってトレンチコートをはおると、支度する観世の側を通り、ブルーのカーテンを引いた。観世が革靴を履いて外に出る。風がふありと舞い込んだ。

「次の土曜日、チーズケーキの試食会をするから、200円持ってきて。」

「え、楽しみです。何時からですか。」

「携帯に連絡する。ちょっと準備がかかるから。20人集まるから。」

観世は、トレンチコートのポケットから白い携帯を開いて、書き込んだ。私は、部屋の鍵をかけて、エレベーターを使わずに、タタンタン、タタンタン、トンとマンションの一階に下りた。観世は、時刻表を取り出して、次の電車の時刻を調べた。

「18時35分・・まだまだ余裕があるから・・。」

「じゃあ、妹に宜しく。」

「あ、はい。それじゃ。」

トトントン、タンタン、トトト。

『川口方面の電車がまいります。踏切の前まで下がってください。』

茶グレーの6両編成の電車が、近づいて行った駅の上を見上げながら、私は踵を返した。

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