第14話 星降る夜に、君と
永遠が大きく息を吐いた。
「驚いた……。レオンだった」
「うん、レオンだったね」
顔を見合わせた僕達は、クスクス笑った。
「見て、永遠。雨が止んだよ」
いつのまにかモヤが消えて、トイレに明かりが戻っていた。
「まるやま湖、見に行ってみない?」
僕はさりげなく永遠の手を取り、そのまま手を繋いで、僕達は走りだした。
空には雲もなく、雨上がりの澄んだ空気が気持ち良い。
「旅人、見て! スゴイ星!」
満天の星空とは、こういうことを言うんじゃないかな。
「あ、流れ星! あ、あそこにも。こっちにも」
永遠が指差す。
目が慣れてくると、スーッ、スーッと幾つも星が流れていくのが見えた。
「流れ星に願い事を3回唱えると
「うーん、こんなにたくさんの流れ星、どれに願いをかけたら良いのかな。旅人は? 何をお願いする?」
「秘密。言ったら、叶わないんでしょ」
「じゃあ、私も秘密」
永遠はフフッと小さく笑った。
永遠が何をお願いしたのかはわからない。
でも、僕の願いをそっと教えてあげるね。
「永遠は獣医になる」
これなら3回、言えるでしょ。
僕は永遠の夢を応援したい。
「あ、あ、あ……すごい、旅人。見て!」
流れ星が急にたくさん増えたかと思うと、湖へと降り注ぎはじめた。
星で埋め尽くされた湖面が、キラキラ光って、
そして……。
銀色の巨大なクジラが、水面から現れ、身体をひねり、お腹を見せながら再び湖に身を踊らせる。
ザッバッーンという音はしないけれども、湖面が左右に高く盛り上がり、膨大な量の水飛沫……じゃなくて、星のカケラの飛沫が僕達に降り注ぐ。
キラキラ、キラキラ……。
永遠の頭や身体に付いた星のカケラが光っている。
それは、とても綺麗で、
綺麗という以外の言葉が見つからなくて
降ってくる星屑を両手で受けとめようとしている永遠の笑顔を
この不思議な夜のことを
僕は忘れない。
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