また友達できちゃった!
おっと、記念すべき初の友達なんだ。
私なりにおもてなし……そうだ、プレゼントを。
資料で読んだぞ。
友達とはプレゼント交換をするものだ、と。
と、言っても何を……
そう思っていると、ドアの外から足音が聞こえた。
あの音……女性か。
身長150センチ台、体重は50キロ前半と言うところか。
戦闘経験は……なし。機能的な歩調からすると職業は看護師。
その直後、軽くノックする音が聞こえて「ミア・デニーロちゃん。いいかしら?」と軽やかな声が聞こえた。
「はい、どうぞ」
そう答えると、ドアが開いて白衣に身を包んだブロンドの髪のをポニーテールにした女性が入ってきた。
女性は私を優しい目で見ると、小さく頷いた。
「良かった、元気そうで。本当に心配したのよ」
「ご迷惑をおかけしました。お陰で四肢も特に異常はありません。幻覚や妄想等の異常はなし。視力聴力共に異常なく、頭痛も見られず。ただ、脳の機能として広範囲の記憶障害が見られますので、海馬の機能低下の可能性あり。現在の対応としては父から情報を収集し、記憶の補完に努めています」
「そう……なんだ……え、えへ、良かったわ。なんか、ミアちゃん……雰囲気変わったわね。エリス、ビックリ……前、良くここに来てた時と別人みたい……」
ふむ? この看護師はエリスと言うのか?
なにを戸惑ってるんだ?
あと、気になるのがこの親しげな口調。
もしかして……
私はエリスと名乗る女の目をじっと見て言った。
「もしかして、エリスも……友達?」
「……はい?」
「ミアの友達ですよね」
氷のような、機械のような冷静さを持って目の前の女性の表情や微妙や身体の動きの分析を行う。
見誤るな、九国理沙。
ここが分岐点になる。
彼女は私の……友達か?
「あ……う……そ、そうだよ! エリスは患者さんみんな友達……」
むむ!? 分析の必要が無かった!
またしても……
「2人目! 労せずして2人も友達を確保! これは……凄いことだ! 何なんだ、この世界は……天国か! ねえ、エリス? あなた、今まで何人殺してきた? 洗脳や拷問は得意?」
「え……ええっ!?」
「あ、苦手なんだね! 私の苦手は死体の効率的な解体! 30分もかかっちゃうの。内臓の処理に時間取られちゃってさ……エリスは得意? もしそうなら教えて! 代わりに効果的な拷問のやり方教えてあげるね! 最近見つけたすっごい責め方があって。良かったら一緒に教え合わない? わあ、私達すっごく青春してる……感動」
半泣きの顔をしているエリスを見て、私はハッと気付いた。
そうか……勘違いをしていたようだ。
これでは友達失格だ。
私は表情を曇らせておずおずと言う。
「ゴメンね、エリス。そんな顔しないで……ミア、勘違いしてた。友達の適性も分析出来ないなんてミア、悲しい。そっか……エリス、後方支援だったのね。じゃあハニートラップ要員かな? 胸も大きいし、美人だし、唇を見る限り気持ちの良いキスを提供できそうだもんね。男を骨抜きに出来そう」
「そ……そんな! 知りもしないで、酷い! キスは本当に好きな人とする、取っておきなんだからね! いくらミアちゃんでも軽々しく……」
涙目で話すエリスを見て、私ははたと気付いた。
いかんな、私としたことが。
急激な変化に脳が処理し切れていなかった。
落ち着かねば……
確かにそうだ、知りもせず私としたことが……
私はベッドを出るとエリスに歩み寄った。
「ゴメンね、エリス。そっか……テストして欲しかったのね」
「へえ? テスト……?」
私はエリスの頬に両手を添えると、顔を引き寄せてキスをした。
「ふえあ? ……はひへ!」
なにやらエリスのもごもごした声が聞こえるが、構わず継続する。
ふむ……やはり、Bランクだな。いや、Bプラスか。
では、口の中も……ほうほう、悪くない。
その時「ミア! 目が覚めたんだって!」と大声がドアの外から聞こえたので目を向けた。
すると、その直後ドアが開き……栗色の髪を腰まで伸ばした、中々の美少女が茫然自失と言う感じで立っていた。
むう? ミアと呼ぶと言うことはこの子……
「ミア、それ……キス? ……はいい!?」
「あなたがアメリア?」
美少女は呆けた様子で頷いたので、私はニンマリと笑って言う。
「初めまして、アメリア。私の友達! ゴメンね、丁度2人目のお友達のキスをテストしてたの。この人はBプラスね。良かったらアメリアもする?」
だがアメリアは返事をせず、その代わり……倒れた。
「ええっ!? お友達が……気絶。なんで! ねえエリス、助けてあげて……って、何でエリスまで倒れてるの!?」
これはまずい、想定外もいい所だ。
なぜ友人が二人とも気絶している?
どこで間違ったのだろう……組織であれば、胸踊るような情報提供の機会のはずなのに。
「友達作り」とは中々に奥が深い……
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