第56話
今回は、例の幼馴染み達のお話(ほんのちょっと)。
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『ねぇ、慎くん』
急カーブから数分。
スーパー林道に入って、凡そ10分ほどが経っただろうか。
勾配も落ち着き、3速で上っていると急に緋音が俺に話しかけてきた。
『ん?どうかした?』
『なんか、お喋りしたくなって』
『うーん…といってもこれって話題が』
運転に集中しているから、あまり他の事を考えている余裕はない。
相槌や返答くらいは出来るが、長考が必要な物は流石に無理だ。
『そうだよね、話題…話題…あ、お母さんから聞いたんだけど』
緋音が、そう言って話題を振り始めた。
その間も、坂道を上へ上へと走行していく。
偶に、林道が片側開けて視界が開けると麓の様子が見て取れる。
が、霧が掛かっているようでしっかりは見ることは出来ない。
『私達の幼馴染みのあの人たち。
もう、子供が中学生だって』
幼馴染み…俺と緋音と同じ町内の男たち。
俺としては、彼らとの交流は皆無である。
いや、緋音もだろう。
彼女が、女子校へ行くきっかけにもなっている。
緋音には、付きまといを。
俺には、虐めまがいなことを小学校6年間…俺にはプラス3年間し続けていた。
そして、高校時代。
俺が、キレた事で全ては終わった。
まあ、若気の至りだな。
『そっか、まあ俺達もいい歳だからね』
『…えへへ、慎くんとの子供…』
小声の筈だが、全部俺の耳に届いてしまっている。
まあ、マイク越しだから仕方ない。
子供か。
緋音との子供…俺は、しっかり愛情を籠めてあげられるだろうか。
茉子の様に…。
『ねぇ、緋音』
『なあに?』
『もしこの先、俺に駄目なとこがあったらしっかり言ってほしい』
『…うん、じゃあ慎くんも私に言ってね』
『ああ、お互いしっかり言い合おう』
俺が、出来ていなかったこと。
きっとこういう事だったんだろうな。
真恵を理解しようとしていなかった…のかもしれない。
まあ、理解できたとは思わないけど。
やがて、道は最後の連続急カーブへと差し掛かった。
またも、左カーブである。
『緋音、気を引き締めていこう』
『うん、此処まで来るとあと少しだね』
左へ右へ左へと繰り返すと右手側の林道が開けた。
そして、駐車場が見えて来る。
秋葉山本宮秋葉神社。
別名、秋葉山や上社である。
大体、秋葉山と言ったら此処の事を指す。
下社は下社で通るしなぁ。
駐車場には、殆ど車が止まっていない。
俺達は、駐車スペースに駐車する。
『緋音、降りていいよ』
『はぁい』
バイクから彼女が降りる。
それと共に、沈んでいた車体が少し浮く。
俺は、スタンドを立ててバイクから降りた。
そして、ヘルメットを外す。
「慎くん、お疲れ様」
「緋音もお疲れ様」
俺達は、バイクのヘルメットロックにヘルメットを取り付けるとグローブを外したりジャケットをく崩したりして一息吐いた。
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