第52話

暫く走ると左手にダムが見えて来る。

船明ダム。

春には、桜並木が綺麗に見える公園のある名所の一つだ。

そして、そこからは左手に天竜川が続いている。


『慎くん、知ってた?ここも浜松市なんだよ』

『え…あ、そうか合併したんだっけ』


浜松は政令指定都市になる時に、市町村が合併した。

現在いるところは、旧天竜市、春野町・佐久間町・龍山村・水窪町などからなる天竜区である。

昔は、ここが浜松市になるとは思ってもいなかった。

ちょっと感慨深い。


『そう、秋葉山までいっても浜松市なんだよ』

『そうなんだ…ホント感慨深いな』


トンネルをいくつか越えると赤い橋が視界に入る。

『夢のかけ橋』。

船明ダム湖を挟んで左岸の道の駅・花桃の里と右岸の伊砂ボートパークとを結ぶ歩行者・自転車用の橋である。


『慎くん、花桃寄ってく?』

『休憩がてら寄ろっか』


俺は、右折して道の駅・花桃の里へと立ち寄ることにした。

バイクを駐車場に停める。

緋音は、停車するとバイクから直ぐに降りる。

俺も、バイクを降りてヘルメットを取る。


「慎くん、お疲れ様」

「少し、休憩にしようか。秋葉山までは30分もあれば着くけどさ」

「ここに来るとカレーが食べたくなるけど…まだお昼じゃないから無理だよね」


花桃の里の食事処は11時から。

今は、10時前だから営業時間外である。

花桃の里のカレーとは、花桃カレーで野菜が溶け込むまでじっくりコトコトと7時間以上煮込んだ甘口カレーである。

それに、山菜そば・うどんも絶品である。

地場で採れた山菜をたくさん使っている。

フキノトウ、タラノメ、コシアブラなど山菜は時期によって様々である。

平日にはランチもある。

ああ、お腹空いてくるなぁ。

食堂では、天竜茶を飲むこともできる。

まあ、何にしても営業時間外だ。


「慎くん、ソフトクリーム食べよ」

「うーん、いいけど…1個はいらないかも」

「じゃあ、半分こね」


緋音は、売店へと向かっていく。

俺も、その背中を追う。

入り口脇の小窓の前で彼女は立ち止まる。

緋音は、ピンク色のソフトクリームを手に俺の方へと向かってきた。


「えへへ、このソフトクリーム可愛いよね」


確かに、ピンク色で可愛い…多分。

きっと、可愛いのだろう。

うーん、こう言った美醜はあんまりわからないや。

それから、俺達は夢のかけ橋が見える席に腰を下ろす。

緋音は、ソフトクリームを舐める。

やがて、俺に差し出してくる。


「えっと…」

「慎くんも食べて」


俺は、躊躇いつつも彼女の持つソフトクリームに顔を近づけて舐める。

腔内に、甘みが広がる。

美味しい。

でも、照れくさいな。

顔が熱い。

緋音の顔も、赤くなっている。

俺だけじゃないことが分かってホッと胸を撫で下ろした。


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ソフトクリームは、イチゴ味でした

11/15実地確認

後日近況ノートにレポートします。

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