第51話
風を切る音が聞こえる。
肌に当たることはないが、ヘルメットを…ジャケットを風の抵抗が阻む。
だが、どこか心地いい風が纏わりついている。
『慎くん、気持ちいいね』
ヘルメット内部に装着したスピーカーから緋音の声が聞こえた。
レシーバーをヘルメットに仕込んである。
それによって、会話をすることができる。
直に話をするとなるとどうしても風切り音で聞こえはしない。
ツーリングには、ある意味必需品と言えるだろう。
まあ、ぼっちが使用する場合はスマホ連動で音楽が聴けたりもするらしい。
『やっぱり、バイクはいいな』
『うん。でも、一番いいのは慎くんの背中に抱き着いていられるからだけど』
少し照れた口調で緋音がそう言った。
確かに、車と違って密着感がある。
今も、俺の腰に腕を回し背中に緋音が引っ付いている。
ただ、双丘の柔らかさは感じない。
まあ、プロテクターの所為だろう。
それでも、プロテクター越しに反動があるような気がする。
現在は、飛龍街道を北上している。
先程、左手にサンストリート浜北があった。
『そういえば、さっきのサンストリート浜北って何の店?』
『あ!そっか、あそこもなかったね。
あれは、複合施設で映画館とか、バローホームセンターとか入ってるんだよ』
『え!映画館があるの?』
浜松の街中以外に映画館があることを知らなかった。
それにしても、今は知ってる飛龍街道も昔と随分と違う。
ちょうど、左折しようとしている所も、昔はこんなに広い道はなかった。
南から伸びる国道152号線。
昔は、もっと道幅が狭かった記憶がある。
浜北市から天竜市には、天竜浜松線…笠井街道・国道152号線…電車通りとの2つの道がちょうどぶつかる位置に遠州鉄道…赤電の駅 西鹿島がある。
西鹿島を越えるとすぐに天竜川へとぶつかり大きな橋が架けられている。
そして、トンネルを潜ると鳥羽山城址公園や天浜線・二俣駅がある。
『うん、あとはららぽーと磐田にも映画館があるから近隣だと3か所に映画館がるんだよ』
『へえ、変わるもんだね』
『うん、慎くんの居ない20年は長かったよ』
俺は、川沿いを走り北上をする。
二俣の町並みを横に進むと、昔と変わらない看板が出てきた。
『秋葉神社 左折・上社。右折・下社』。
Y字路に架かるその看板を、俺は左に曲がる。
今日の目的地は、スーパー林道と秋葉神社上社である。
昔からよく行っていたところだ。
流れる景色に違和感を覚える。
『あれ?サーKは?』
『サークルK?随分前に、ファミマになったけど』
光明の交差点には、遠鉄ストアとサークルKがあった…はずだ。
遠鉄ストアは、前の通りあったがサークルK(通称:サーK)はファミリーマートになっていた。
それからも、いくつかのコンビニが点在している。
昔は、サーKが最後でお店らしいお店も道の駅までなかった。
やっぱ、時間の流れが顕著だな。
俺は、そう思った。
----------
サークルKとサンクスの合併が2004年(20年前)
サークルK・サンクスがファミリーマートへ統合になったのが2016年(8年前)から2018年(6年前)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます