第48話
緋音は、部屋着に着替えに行った。
俺は、3つ目の餃子を焼き終えて大皿に並べてた。
最後に、もやしを蒸し焼きする。
浜松餃子と言ったら、もやしは忘れてはならない。
特に、このもやしには口直しの意味も含まれている。
「わぁ、綺麗な焼き目だね」
いつの間にか、耳元で緋音が囁いていた。
気配を消して近づくのやめてほしい。
心臓に悪い。
「おう、我ながらうまく行ったよ。
じゃあ、ダイニングに運ぼうか」
「はーい、ありがとう。慎くん。お料理作ってくれて」
「俺が、やりたくてやってることだから…でも、そう言ってくれるのは正直嬉しいな」
真恵は、まずそんな事を言ってくれたことはなかった。
まあ、殆ど家政婦のような扱いをされていたような気さえする。
仕事の激務と家事に追われた毎日。
それも、でっかい子供の育児と子供の育児に追われる日々。
地獄だったんじゃないかと思えてくる。
餃子とご飯を持ってダイニングへと向かった。
ダイニングテーブルに、全てを置く。と、緋音は俺の茶碗を自分の隣に置いた。
どうやら、隣り合わせに座りたいようだ。
俺達は、席に着く。
「じゃあ、食べよ」
「ああ、そうだね」
俺達は、夕飯を食べ始める。
大皿の上には、先程焼いた餃子が円形に盛られている。
もやしは、ボール状の深皿に盛られていた。
それを小皿によそっていく。
餃子のたれは自作した。
「このタレってどうしたの?」
「自作したんだよ、醤油と砂糖、酢で配合したんだ」
それとは別に、ラー油も用意した。
そこまでするなら買って来いと思うかもしれないがこれ以降に使うかわからない物を買うのは無駄すぎるから。
ラー油は、割と簡単。
ごま油に唐辛子(一味・七味)や鷹の爪、豆板醤、コチュジャン、かんずり、タバスコを混ぜたらできる。
今回は、唐辛子…鷹の爪を微塵切りにして混ぜ合わせだけの物だ。
「こっちのラー油もお好みでね」
「慎くん凄いね、こんなものも作れるなんて」
「調味料は使うかわからないからね、マヨネーズも自作しちゃうから」
まあ、流石に料理の「さしすせそ」くらいはあったほうがいいだろう。
ちなみに、「さしすせそ」は砂糖、塩、酢、醤油、味噌の事である。
断じて、砂糖、醤油、酢、「せ」ってなんだ?まあ、いいや。
ちなみに、ソースでもない。
「せ」が、醤油なのは昔は「せうゆ」と言っていたかららしい。
「慎くん、あーん」
緋音が、餃子を箸で掴み、タレを潜らして俺の口元に差し出してきた。
タレが垂れそうになっていた。
俺は、慌てて口を開ける。
「あーん」
そして、腔内に差し入れられ…俺は、咀嚼した。
キャベツの甘味、ニラ、大蒜、生姜の風味に、お肉の油がじゅわっと腔内に広がった。
浜松餃子は、基本が野菜餃子である。
まあ、今回は肉がメインの肉餃子も並べてあるけど。
「ああ、野菜が美味しい」
「ふふ、そうだよね。餃子と言えば野菜餃子だよね」
「そういえば言ってなかったけど、これ杏林堂の本当においしい餃子ってやつだよ。3種類あるよ」
「あれ?3種類もあったっけ?
確か、白いパッケージの野菜餃子と黒いパッケージの肉餃子だけじゃなかった?」
じゃあ、あの緑のパッケージの餃子は新しく出たものだったんだろうか。
「キャベツたっぷり野菜餃子ってのがあったからそっちは普通のよりもキャベツが多くて甘いだら」
「キャベツたっぷりなのね、それは楽しみ」
それから、時々食べさせながら餃子を食べていくのだった。
俺は、ちょっと多めにラー油を混ぜた。
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