第45話

「慎くん、今日はもうお休みでいいよ」

「え、俺何もしてないけど」


社長室に戻ってきた緋音に第一声でそう言われた。

ちょっとだけ挨拶回りとオンライン会議に参加しただけ。

緋音の秘書として何にも仕事していない。


「えっと、慎くんにあんまり無茶させたくないなってのが本音…でも、このあと別件で会議になっちゃってお仕事教えられないから…ね」

「じゃあ、残業するようなら教えて…ご飯作って待ってるから」

「あ、うん。ご飯楽しみ」


まだ、14時を回ったばかり。

夕飯作るにしてもまだまだ早い。


「緋音、1個だけお願いがあるんだけど」


俺は、ふと予定を1つ思い出した。



タクシーを呼んで貰って清明がバイクを点検に出したバイクショップへと向かった。

ちょうど、そのバイクショップは用品なども売っている所らしい。

有玉の2りんかん。

こんな所ができているとは。

浜松は、ヤマハ、ホンダと密接な関係がある。

その為、バイクの街とも呼ばれているほどバイクショップも多い。

ライダー人口もそれだけ多かったりもする。

受付へと向かう。

ちょうど、受付に男性がいて助かった。


「すいません、バイク点検の引き取りに来たんですけど」

「お名前お伺いします」

「萩岡と言います」

「お調べします。お待ちください」


男性は、パソコンを使用して調べ始める。

そういえば、ヘルメットやジャケットなどの装備も買わないとな。


「お待たせしました」


俺は、案内され駐車場へと向かう。

そこで、整備工場から俺の愛車が運び出されてくる。

黒のボディーのアメリカンタイプのバイク。

Honda スティード400VLS。

アメリカンブームの火付け役と言われるほどスティード400の系譜だ。

VLSは、発売後3年でラインナップから消えてしまった通好きなバイクの1台である。

スティード400の後継機スティード400VLXの純正カスタム機がスティード400VLSである。

スティード400VLXからスプリンガーフォークや21インチホイールの採用。

フランジレス製法&小型化されたタンク。

ホイールベースの延長とローダウン化で「ロー&ロング」を強調。

セパレートタイプのシートや、形状が変更されたリアフェンダー、ミッションのワイドレシオ化などが施されている。


「懐かしい」


俺は、そう呟いていた。


「名義変更などの手続きは弟さんから頼まれていましたので処理してます」

「ありがとうございます」


俺は、鍵を受け取る。

懐かしいな。

こんな鍵だった。

俺は、店員の男性と一緒に店内へ戻った。

それから、ヘルメットやプロテクター付きのジャケット、ブーツ、サイドバッグなど必要な物を全て購入した。

来た時とは、すっかり変わってみた感じライダーになった。

俺は、その足で免許センターへと向かうことにした。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る