第44話
「差し当たり、慎くんのスマホが必要だよね…うーん、本体はそのままで
番号を変える?
まあ、変えても問題はない気がする。
今連絡が来るのは、清明と緋音くらいなものだ。
変えても困ることはないな。
「それもいいかもしれないな」
「ふふ、じゃあ事務で社用スマホのSIM貰ってくるわね」
そういって、緋音は社長室を出ていった。
社用スマホ…か。
いいのかな?
あれ?俺のスマホが無くなってる。
緋音が持って行ったのかな。
まあ、電源も落としてあるし問題はないか。
見られて困るものもないしな。
◇
やった!
これで、慎くんの電話帳の1番は私の物だよ。
清明くんは、2番目位でいいよね。
私は、社長室を出て再び事務所へと向かった。
そして、財部 深月の元に向かう。
「あ、社長。萩岡さん、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫…一応」
「一応?」
「あとで、ミーティングをするから部長各位に連絡しておいて」
「えっと、オフラインですか?」
「内々で行いからオフラインで」
慎くんの個人的な話が含まれるから他の子たちにあまり聞かれたくない。
ミーティングは、防音もしっかりしているしこの隣にある。
オンラインではできない話をするときに利用する。
「その旨は、私から連絡しておきます」
「よろしくね、それと社用スマホのSIM貰える?」
「萩岡さん用ですか…それなら社長のプライベートスマホとペアリングにした方がいいですか?」
「あ!それでいいかも」
実は、深月ちゃんはこの会社で唯一の携帯電話販売代理店との窓口だったりする。
元々、大手携帯ショップに勤めていたこともありノウハウを生かしてパイプを築いた。
深月ちゃんの副業とも言える。
「では、社長この中々選んでください」
彼女は、電話番号の印字されたカードを取り出して並べている。
番号の違い…実際どれでも大差ない。
あー、でもこの辺なら私の番号に近いかも。
私は、並べられたカードから1枚選ぶ。
「じゃあ、これで」
「はい、この番号設定しときますね。
本体はどうします?」
「本体は、元々慎くんが使っていたのを使うんだけど…別で一台借りたいかな」
「?わかりました、本体預かりますね」
私は、深月ちゃんに慎くんのスマホを渡す。
さて、元嫁さんをどうしてやろうかな。
「深月ちゃん、このスマホに入ってるSIM気を付けてね」
「え、どういうことですか?」
私は、笑みを返すだけにして社長室に戻った。
ちょっとした悪戯心だ。
◇
「えー、怖いんだけど」
財部 深月は、ボヤいていた。
それでも、やらなければならないので渋々作業をする。
開通手続きを終わらせた彼女は、慎のスマホと空の貸与スマホとでSIMを入れ替える。
そして、慎のスマホに緋音が選んだSIMを入れる。
それぞれのスマホの電源を入れていく。
キャリアロゴが表示され、暫くすると独特な着信音が鳴り響いた。
事務所中の視線が、財部へと向けられる。
「もぅ、こういう事!」
彼女は、驚きで張り裂けそうな胸の鼓動を必死で我慢しながら貸与スマホをサイレントモードにした。
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