第46話

浜北警察署に隣接している西部免許センター。

有玉からは、そのまま北上すると10分ほどで到着する。

総合窓口に向かう。


「今日はどうしましたか?」

「住所変更なんですが」

「更新を含みますか?」

「いえ、変更だけです」

「では、こちらの番号をお持ちになってお待ちください」


俺は、ここでもちょうど男性職員に案内された。

それから暫くして、会計窓口に案内された。

ここは、流石に女性だったが年配の方で女性恐怖症は為りを潜めた。

どうやら、同年代から年下が駄目みたいだ。

まあ、緋音を除くだけど。

やっぱり、彼女だけは特別のようだ。

記載用紙を貰い、マイナンバーカードの記載と照らし合わせながら記入をしていく。

そして、住所変更の窓口へと向かう。

窓口前の椅子には、割とご年配の方が多い。

列に並び待っていると殆どの方が返納の手続きのようだ。

親父やお袋もいい歳だから、もうそろそろ考えないといけないかもしれないな。

確か、今年75になるはずだから。

その辺りは、清明任せになってしまうかもしれない。

でも、何かあったら相談には載りたいな。

やがて、列も途切れ俺の番になる。


「今日はどうされました?」

「住所変更をお願いします」

「はい…本籍の区変更まだのようですね。一緒にやっておきます。

お待ちください」


俺は、窓口前の椅子の腰を下ろす。

スマホもないから特にやることもない。

あとは、家に帰って夕飯の支度かな。

何を作ろうかな。

昨日は五味八珍だったからな。

ん?そう言えば餃子食べてないな。

確か、杏林堂で美味しい浜松餃子が売られているって前にテレビで見た気がする。

もう、何年も前だけど。

帰りに寄ってみよう。


「萩岡さん、お待たせしました」


俺は、呼ばれて窓口に向かう。

そして、記載内容に間違いないことを確認すると財布に免許証をしまう。

じゃあ、次は杏林堂に寄ってから帰ろうかな。



「というわけでね、慎くんは女性恐怖症になっているみたいだからみんなは極力近づかないようにね」

「それですと、秘書と言ってもスケジュール管理とかだけですか?」

「基本は…でも、慎くん自体はかなりお仕事できそうだから少しずつ慣れていってもらおうかなって」


私は、ミーティングルームで各部署の部長たちと話をしている。

一応、女性恐怖症になる原因となった元嫁の事は伝えている。


「顧問弁護士の立場から言わせてもらうと…法的な訴えを起こしましょうか」

「うん、徹底的にやってしまいましょう」


ミーティングルームの中央に置かれた慎くんのSIMを入れたスマホは数秒ごとに鳴動している。

よくもまあ諦めない、飽きない物だと感心する。


「社用スマホに移しているので業務の妨げになっていますし、威力業務妨害やストーカー規制法などには当てはまるかもしれませんね」


ミーティングルームの中での話は、外に漏れることはない。

此処にいる7人だけの秘密である。


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社長=萩岡 緋音

弁護士=守家もりや 美夏みか

財務部=財部たからべ 深月みつき

営業部=武営たけなかかえで

生産部=造里つくり凪咲なぎさ

企画部=造里つくり 汐莉しおり

デザイン部=絵鳩えばと はる


造里 凪咲と汐莉は姉妹です。

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