第13話

【緋音視点】


私は、ほっと溜息を吐く。

そして、自分が今日しでかしたことに頭を悩ませていた。

本当は、慎くんが今日帰ってくることを知っていた。

あの病院で働いている看護師は、私の高校時代の友達だから。

まあ、看護師と言っても看護師長だけれど。

彼女は、退院する慎くんが仕事をクビになり実家に帰る事を聞いたらしい。

雑談として。

そして、彼女は私が高校時代に慎くんと撮った写真を見ていたし、入院患者のフルネームは分かる。

話していくうちに、地元が同じ事も雑談の中で聞いていて私に話が来た。

出張…なんて真っ赤な噓。

本当は、慎くんを迎えに行っただけ。

多分それは、明日になったらバレる。

だって、私が有給まで使って休んだ事を社員はみんな知っているのだから。

それにしても、どうして私は慎くんのご両親にあんなことを…。

私は、自室のベッドに倒れ込み悶える。

声にならない声を上げて。

でも、これで私は慎くんのお嫁さんになれる。

諦めていた。

でも、ずっと諦めきれなくて…この歳まで独り身だった。

それに…男性経験もない。

女子中学、女子高、女子短大とずっと女性の園で純粋培養されてきた。

干物女とでも言えるほどに。

モテたこともない。

確か、喪女だったけ。

でも、私が振り向いてほしいのは慎くんだけだから。

よし、頑張って誘惑しよう。

えっと、恥ずかしいけど薄着で…いいよね。



--------------

ご指摘があったので補足

社長・役員には労働基準法に基づく有給休暇がない。

企業独自の有給休暇が存在する所もあるようなのでそちらの意味合いで。

ちなみに、よっぽどな理由がないと今まで公休も取らなかった人が私用・有給を使用している。

この話は、『翌日』の話になりますので此処ではここまでにします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る