第11話

そして、徒歩数分…緋音の実家。

外観は、昔と変わらない。

ただ、緑…というか、花が多い。


「ママ!久し振り」


ちょうど、家の入り口でプランターの花の手入れをしている女性に緋音が話しかける。

凄い久し振りだけど、なんとなく記憶の中の緋音のお母さんと結びつく。

というか、あまり年を重ねているように思えない。

確か、母さんと変わらない年だったはずなのに緋音と姉妹と言われてもそうなんだとさえ思えてしまう。

まあ、緋音自体も若く見える。

遺伝かなんかなのかな。

恐ろしい。


「あら、緋音。お帰りなさい。

…あらあら、慎くん?随分見ない間に大人になって」


22年振りくらいだから、かなり久し振りなんだけどそれでも分かるものなのか。

俺も成長…年取ってない?

いや、そんなことはないな。

おっさんだ。うん、年相応のはずだ。


「ママ、あのね。慎くん貰ってきたの」

「あら、そうなの?初恋を拗らせてもう結婚しないものだと思っていたのに、よかったわ…でも、不倫は駄目よ」

「慎くんは、独身に戻ったんだからいいの!」

「そうなのね、じゃあ慎くん。緋音の事よろしくお願いします」

「あ、はい」

「やったぁ、言質は取ったからね」


あ!しまった。

緋音と緋音のおばさんのペースに巻き込まれた。

まあ、なるようになるか。

それにしても…やっぱりおかしい。

緋音は、綺麗で可愛い…はずなんだろうけど。

俺には、それが分からない。

たぶん、緋音だけにじゃない。

俺は、美醜の感覚が麻痺しているのかもしれない。

いや、麻痺というよりも欠如しているのかも。

それは、離婚後からあったのかも。

テレビを見ても女優さんが可愛いと思えなくなっていた。

こんな俺が結婚していいのだろうか。

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