第8話

やがて、懐かしい風景が見えてきた。

田んぼだらけの町並み。


「うっわ、懐かしい」

「私も…5年ぶりくらいかも」


お互いに懐かしがった。

俺にとっては、10年以上ぶり。

元嫁との顔合わせの時だった。

それより前もきっと数えるくらいしか帰っていないかもしれない。


「緋音も久し振りなんだ?」

「うん、起業してからは忙しくて」


流石、社長さんと言ったところかもしれない。

やがて、車は細い路地に入っていく。

車がすれ違うことができないが、一通ではない。

そんな、狭路である。

そして、その先に俺の実家がある。

築40年以上。

木造2階建ての小さな家である。

狭路にある為、建て増しも改築もできない。

一応、狭路を抜けて奥まで行くと少し広くなっているので緋音の車を駐車することはできる。


「ありがとう、緋音」

「ううん。まあ、このお礼はこの後返してもらうから」


彼女は、含みのある笑みを浮かべていた。

この後、呑みに行くって意味かな?

やがて、車が広場で駐車される。

俺は、車から降りて荷物を下ろす。

そして、玄関へと向かうと俺の後ろを緋音が付いてきた。

呼び鈴を鳴らす。

暫くすると、玄関の引き戸が開けられる。

そこからは、依然会った時よりも少し年を重ねた弟が顔を出した。


「あ!兄さん。

それに、もしかして緋音さん?」


弟は、すらっと背丈が高い。

俺よりも頭一つ分くらい違う。

俺にも、それくらいの身長が欲しかった。


「清明くん、久し振り。

叔父さんと叔母さんっている?」

「いますよ、よかったら上がってください」


清明に促され、緋音は俺の実家に上がっていく。

俺も、おずおずと後ろをついていく。

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