第3話
腕時計を確認する。
13時30分。
まだ、東京駅を出発して数分だった。
気分は、もう30分くらい乗っている気さえする。
まあ、なんといっても隣りに女性が座っているからと言うのもある。
「あの…その腕時計」
隣に座る女性から声を掛けられた。
彼女の視線は、俺の左腕に着けられた腕時計だった。
「これですか?これは…高校時代に初バイト給料で買ったちょっと思い入れのある腕時計なんですよ」
高校時代。
俺は、パン屋のバイトをしていた。
あの頃は、マジで労働時間とかガン無視で
今だったら確実に労基が突してくるだろう。
36協定があれば残業無限とか普通に駄目だから。
はぁ、あの時の経験がこの間まで続いていたのかもしれない。
「その腕時計ってペアじゃないですか?」
「え?確かにそうですけど」
この腕時計は、確かにペアの腕時計である。
文字盤の色だけが違う。
俺のは、青の文字盤でもう1つは…。
「もしかして」
女性は、右手の手首を俺に見せて来る。
そこには、ピンク色の文字盤の腕時計が着けられていた。
俺の物よりも少しだけ小振り。
でも、それは元々男女のペア用の時計だからサイズが違う。
「珍しい。世界に数本しかないヴィンテージなのに」
「はぁ…慎くんは薄情です」
「え?どうして俺の名前を…」
『
それが、俺の名前である。
「私だよ。
「へ!?緋音ちゃん」
彼女をしっかり見つめる。
確かに面影がある。
もう、20年近く会っていなかったのに言われてみれば子供の頃から一緒に育った樋野 緋音の面影と重なって見えた。
「まさか、こんな所で再会するなんてね」
「ああ、確かに」
「慎くんはいまなにしているの?」
俺たちは、久し振りに近況を話し合うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます