第2話
昼まで時間を潰してから新幹線のホームへ向かった。
ホームには、既に新幹線が停車している。
『こだま729号 東京発浜松行き』。
俺の手のひらには、そのチケットが握られていた。
『7号車 7E』。
それが、俺の座席だ。
ちょうど、山沿いの風景を見ることができる。
つまり、富士山を眺められるという事だ。
実家に帰ることもめっきり減って、富士山を眺めたのももうどれほど前だったのかわからない。
帰ってきたって気持ちになれると思って、この座席にした。
よかった。
ちょうど、空いていて。
トランクケースを指定特大荷物コーナーへと置いて座席へと向かう。
特大荷物コーナー付き座席を予約した。
特大荷物スペース付き座席は残念ながら空いていなかった。
まあ、それは仕方ない。
荷物をいくら減らしてもトランクケースの大きさくらいはあったから予約できただけいいだろう。
座席番号を確認しながら進むとちょうど『7』の席の辺りで女性が上部荷物置き場に入れようとしていた。
背伸びをしながら入れようとする姿はとても危なっかしくて俺は急いで駆け寄る。
そして、荷物を支え手伝う。
女性は、不思議な者を見るような表情をしている。
「ごめんなさい、迷惑でしたか?」
「いえいえ、手伝っていただきありがとうございます」
彼女が入れていた荷物置きは、『7D』の場所だった。
どうやら、隣の席の人のようだ。
女性は、綺麗なお辞儀をする。
「あ、自分。奥の席なので」
「そうなんですね、ではどうぞどうぞ」
女性に招かれて俺は窓側の席に腰を下ろす。
手荷物として持ってきた物を座席の脇に置いておく。
お昼は食べてきたからキオスクで買ったお茶のペットボトルである。
プラットホームからベルの音が流れると静かに新幹線は動き始めた。
『ご案内いたします。この電車はこだま号名古屋行きです。
自由席は1号車から6号車までと13号車、14号車、15号車、16号車です。
この電車は全席禁煙となっております。
お煙草を吸われるお客様は喫煙ルームをご利用ださい。
普通車の喫煙ルームは、3号車、7号車、15号車、グリーン車の喫煙ルームは10号車にあります。
駅および車内への危険物の持ち込みは禁止されております。
不審なものや行為にお気づきの場合は、乗務員または駅係員までお知らせください』
そして、アナウンスが流れた。
車窓の景色は、流れていく。
大学から過ごした東京を俺は後にする。
18年か…。
俺は、車窓の景色を眺めながら物思いに耽るのだった。
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