40歳おっさん、幼馴染みと再会する

天風 繋

第1話

30歳で結婚して、翌年に子供が生まれた。

まあ、出来婚…授かり婚と言うやつだった。

その翌年。

嫁の不貞行為によって離婚をした。

子供は、嫁が引き取った。

というよりも、不貞行為がバレてから子供を連れて蒸発した。

まあ、行先は嫁の実家。

俺は、どうでもよくなった。

それからひたすらに仕事に打ち込んだ。

しなくてもいい仕事量をこなし残業をして…一昨年身体を壊して…先日自主退職クビを宣告された。

俺の人生って何なんだろうと思った。

嫁の実家から近い所に住むという事で引っ越したのが全て間違いだったのかもしれない。

大学を卒業してからずっと東京で暮らした。

もう、久しく地元には帰っていない。

実家には、年老いた両親と年の離れた弟夫婦が住んでいる。

仕事も辞めたからもう東京に居座る意味もない。

帰ろう…都会など来るべきじゃなかったんだ。

細々と生活できたらそれでいい。

独り身それもいいだろう。

もう、なんの未練もない。

どうせ、子供には会わせてもらえないのだから。

あの子は、もしかすると俺の子供じゃなかったのかもしれない。

あの情夫の子なのかもと思ったらもうほんとにどうでもよくなった。

俺は、早々に私物の大半を処分して着替えをトランクボックスに詰めて借家を出た。


「おぅ、清明あきらか?おう、オレオレ」

『兄ちゃん、詐欺なら間に合ってるよ』

「いやいや、兄ちゃんだってわかってるじゃん」

『はいはい、それでどうしたの?兄ちゃん。

兄ちゃんから連絡なんて珍しいね、なにかあった?』


弟の清明に、俺は電話を掛けた。

随分と久し振りに聞いた弟の声は昔と変わらない。


「仕事辞めた…今晩泊めてくんねぇ?」

『え?兄ちゃん、真恵さなえさんと茉子まこちゃんも一緒なの?』


真恵が元嫁で、茉子が娘の名前である。

清明には…いや、家族は俺が離婚したことも身体を壊して入院までしていたこともはなしていない。


「いや、一緒じゃないな」

『そうなんだ…うん、兄ちゃんだけなら泊められるよ』

「ああ、助かるよ。夕方に着くと思うから」

『うん、母さんたちにも言っておくね』

「ああ、頼むわ」


弟夫婦は、実家で暮らしている。

両親の面倒を見てくれているのは助かっている。

新幹線の指定席が取れたのは、昼過ぎの物だった。

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