第54話
もちろん、もうすぐ城にやってくる后候補のお嬢様たちにも序列というものが存在していて、私を除けば恐らくシュガーが一番上になるだろう。
というより、私がその場にいたとしても序列はシュガーよりも下。
それだけシュガーの家は力を持っているんだ。
みんな候補なわけだから、平等に陛下の相手となる資格はあるはずだけど、この国の身分制度はそうさせはくれない。
人は平等なんて、この世界でも前世でもあり得ない言葉だった。
生まれながらの格差。そして歩むべき道も、人によって大きな違いがあるのだから。
「ミル、起きれますか?」
「……無理そうですお嬢様。」
とにかく、バイセンの乱入によって私たちの間に堅苦しい芝居が盛り込まれることになるのは、お互いストレスが多いにかかる問題だ。
できれば、療養所ではミルと2人きりで過ごしたいほど。
「お嬢様、ミル様を運んでもらうよう、使用人に声をかけてまいります。」
「はい。よろしくお願いしますね。」
バイセンが踵を返して歩いていく背中を見つめながら、ふとビターの笑顔を思い出した。
話の端々で、風景を見ながら。ボーッとしている時だって。
いつもあの人が頭の中にいる。
馬鹿なことだと分かっていても止められない自分の心を、もぎ取って燃やしてしまいたいほどだ。
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