第52話
「あんたね、乗り物に乗る前に食べてはいけない食べ物で、確実に3位以内に入る食べ物を食べるんじゃないわよ。」
「た、卵かけご飯の、気分だったのだ!」
「気分でもよ。マジで馬鹿じゃないの?」
「う、うぐ。」
私は乗り物酔いはしない方だけど、それでも長時間の移動前に食べない方がいいものは分かる。
しかも療養所まで馬車で2日かかる。自分が乗り物に弱い体質だと分からなかったとはいえ、ミルはただの馬鹿だと思う。
でも、気持ち悪いせいか、これ以上怒っていられないらしいミルを見て思う。
いつも、乗り物酔いしてたらちょっとはおとなしいんじゃないかな?
「とりあえず、寝ておきな。そんで今度乗り物に乗る予定の時は卵かけご飯なんて食べないこと。いい?」
「そういう」
「気分になってもだめ。分かった?」
「ふ、ふむ、分かった。分かったからそんな怒るな。」
「……別に怒ってないし。」
自分の作った人間の顔色を伺う神なんて、このミルくらいのものなんだろうな。
そう思うとなんだか笑えてくる。
ようやく、目をつむって落ち着いたミルの額に手を当てると、気持ちがいいのか顔が緩んで見える。
私の手、冷たいって言われたことがあったな。
ふと宙を見つめながらまた、ビターの寂しそうな笑顔を思い出した。
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