第50話

ああ、もうほんと。



「び、たー。」


「……小町?」




私って、なんでこんなにどうしようもないんだろう?



薄れ行く意識の中、困惑するビターの顔を見てそう思った。


あんなことをされたのに。裏切られ、蔑まれたのに。




ーーー私はまだこんなに、この男を愛している。




なんて馬鹿で、哀れなんだろう?





ビターがなにかを言っていたけれど、薄れ行く意識の中で、聞くことは叶わなくて。



ただただ、暗闇の中、自分の馬鹿さにあきれ返っていた。





ーーーーー、




「ねぇ、休憩まであとどのくらい?」


「ん?まぁ、そうね、2時間くらい後、かな?」


「うわー。」





あれから、発作まで起きた私の病状は深刻なものとされ、一刻も早く療養所へ行かせた方が良いと判断された。



それからは私を早く追い出したいのかと思うほどの早さで荷造りやらなんやらが完了し、陛下の寂しそうな笑顔に見送られ、私は王家の療養所へ、馬車で向かっている。



供はバイセンと、数人の侍女、そしてミルだけ。




久しぶりの馬車に揺られながら、さっきのビターの笑顔を思い出す。




私の馬車に乗れるのがミルだけでよかった。気を使って話さないでいいだけ気が楽というものよね。




「気持ち悪い。」




口を押さえながら、ミルが本当に苦しそうに言う。神様って馬車が苦手なんだ。はじめて知った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る