第49話

私の目的に合った病気はこれしかない。そう思った。



私が病気療養中だとしたら、この城の中で過ごす后候補の女性達は俄然張り切るだろう。有力候補の私がほぼこのレースから外れてしまったようなものなんだから当然。




私の狙いはそこにある。


彼女たちには張り切って、陛下の心を掴んでほしいところ。そしていっそ后というゴールテープを切ってほしいわけだ。



「小町、苦しいか?」


「……はい、陛下。お心遣い、ありがとうございます。」


「よい。ここから少し離れてしまうが、良い療養所がある。そなたの体のことを第一に考え、治してくるといい。」


「はい、ありがとうございます。陛下。」




頷いたビターが優しい笑顔を見せた。



「っっ。」


「小町、大丈夫か?」




はい、と返事をしようにも、息ができないほどの激痛が私を襲う。激しく痛むのは、胸、いや、心なんだと思う。




私の背中をするその大きな手に虫酸が走るほどの不快感を覚えるのに、喉の奥から嗚咽が沸き上がり、怨嗟の言葉を吐けと頭の中は叫ぶのに。



なんでこんなに、この人が恋しいんだろう?





「小町!おい、本当に大丈夫なのか?」



「恐らく、発作にございます。呼吸を少々しやすくできるお薬を用意いたします。」



「早くしろ!」


「は!」

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