第48話

妃候補の件と同時に、ミルはある"加護"を私に与えた。それとも、悪魔の力なのかな?



神は時に、人に試練を与える。その意味でミルは、ある程度の疫病を発生させることができた。



その内の一つ、というわけじゃないんだけど、この温度小町の体は数日前から、重度の喘息ということになっている。




「どうすれば、小町は。」




優しい、私を心配する声に、思わず胸が高まった。やっぱり、陛下の近くにいるのは心が落ち着かない。



「我が国の療養所で、症状が改善するまで過ごしていただくのが、得策かと。」




ほら、まさに医者のこの言葉を待っていたはずなのに、この人の傍から離れたくない。そう思っている。




この世界には、いわゆる獣人、獣と人間の間である耳やしっぽのついた人間は存在するけれど、魔法が使えるとか、そういうことはなく、前世で言う外国人のように存在するだけ。



獣人達の文化、人の文化、それぞれ共存関係の中で目覚ましい発展を遂げる中、この時代の最先端の医療を持ってしてもまだ、今の私を救える技術はなかった。




もちろん、これから発達していく途中なのだと思うけれど、この時代での重度の喘息には確実に治る特効薬など存在せず、ただ症状を緩和させて空気の綺麗な場所で養生するしか方法がなかった。

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