第47話

ビターから離れる、か。



そんなの、死んだりなにか悪いことでもしない限り不可能な、気が。




「あ。」


「うむ?」



思いついたんですけど、ナイスアイディア。




---、




「喘息、ですね。」


「なんだと?」





医者の診断に、ビターは眉間に皺を寄せた。それはそうだろう。喘息なんて今すぐなるものじゃないし。



だけどすみませんね、なってるんです、喘息。




「ゴホッ、ゴホッ、はぁ、はぁ。」


「っっ、大丈夫か?小町。」


「は、はい。ありがとうございます、陛下。」





心配そうな表情、優しく撫でてくれる大きな手。あの日の温もりそのままのビターの体温に、また心が動かされる。



ほんとに、触らないでほしい。




「小町様が今大事な時期とは思います。しかしもうすぐ新しい妃候補の方々がここへ入城いたします。城内がいつもよりバタつきますし、ここは人口の多い王都市。空気もあまりよくありません。」




あの後、どうしたのか分からないけど、次の日にはシュガーを含めて合計3人の妃候補者が近々入城することになっていた。



すごい、なにをしたんだろう?その言葉の通りに聞けばものすごくふんぞり返って教えてくれるだろうけど。



癪だから、なにも聞かないことにする。



「ゴホッ!ゴホッ!」


「小町。」




それにしても重度の喘息って、こんなにきついものなんだ。

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