第45話

それに、陛下の妻になりたい貴族の娘なんて掃いて捨てるほどいるんだから、陛下や彼の側近であるブレンド。デメリがその気になれば、いつでも城に招くことができるはず。




「……しかしそれで、いいのか?」


「ん?」




いつになく真剣な表情でミルが私に問いかけるものだから、思わず笑ってしまった。



「なにがおかしいのだ。」


「だって。」




それでいいのか?と聞くということは、ミルが私のビターへの未練の有無を疑っていることに他ならない。




「私はもう二度と、あの男に恋はしない。」


「っっ。」




恋とは、厄介なもの。



彼を見るだけで、微笑みかけられるだけで、胸が高鳴る。



どんなに酷い扱いを受けてきたとしても、どんなに彼が憎かろうと結局、彼への想いは愛より重いものは存在しない。




だけど、私は。




「……幸せに、なりたいから。」




私がこの先、ビター以外に恋をするのはあり得ないと思う。それだけ彼を愛し、彼だけを見てきたのだから。




だけど願うなら、数年後、数十年後先の私の隣には、愛し愛され、お互いを想い合う最高の伴侶がいてほしい。



でもそれは、絶対にビターじゃない。そうしたいとも思わないのだからそれは必然だ。




幸せになる。それはものすごく簡単そうに見えるけど、こんな″運命″を背負った私には、とても、とても難しいことなんだと思う。

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