第36話

遠すぎる味方はもはや味方じゃない。そばで支え、私を大事に思ってくれる仲間。それがいないと私には、このクソみたいな場所から逃げる他の良い案なんて見つけられないもの。




「……例え逃げたとして、この国の王の権力は絶大だ。国境を抜ける前に、いや、仮に抜けたとしても必ず捕まり、同じ末路を辿ることになるだろう。」




ため息を吐いたミルが、こぼれたカップ麺の上で手を振った。瞬間、はじめからそこになにもなかったかのように綺麗さっぱり、なにもかもが消える。もちろん、こぼれた汁も。



こんなすごい魔法を使える神がいたとしても、運命というものには逆らえないんなら、ただの人間でなんの取り柄もない私が状況を打破するのは不可能なんじゃないだろうか。




「それでも、反逆じゃない。」


「……まぁ、な。」




例え私がビターの后になりたくないからこの部屋から逃げ出したとしても、反逆罪とまではいかないはず。一度は受けた縁談を放棄したのだから、なんらかの罪に問われるはずだし、一族でそれから逃げようとしたと知られれば両親も無事では済まない。



それにきっと、笑い者になるのは必至。だけど、前々世の未来よりはきっとマシになるはず。




「お前は、そうしたいのか?」




真剣な表情のミルの問いかけに、心揺れないわけはない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る