第35話
なんでもポロポロこぼすミルが言うのをためらうほど、私の家族は酷い目に遭ったらしい。笑っちゃうよね。自分が馬鹿なばかりに、大切な家族も不幸にしてしまった。
それだけ、反逆罪とは重い。それも、ビターという男はどの国の王よりも苛烈で、容赦のない男だ。
「家族もどうせ同じ末路なら、今一緒に逃げて路頭に迷った方が、少なくとも自分の死に方は選べるかもしれないじゃない。」
「……小町。」
ミルの言いたいことは分かる。正々堂々、自分の信念の元運命に挑み、心折れることなくただまっすぐに前を見ていれば奇跡は起こるのかもしれない。
前世で本で読んだり映画で見た主人公たちは、少なくともそうだ。絶望を前にしたとしても、綺麗な心で立ち向かい、くじけそうになったとしても仲間と力強く前進していく。
だけど私には、そんなまっすぐな心なんてない。
2度経験したバッドエンド。今のところ仲間はいない。それに、前々世の記憶を手繰り寄せたとしても、温度小町にはミルを除けば、自分の味方になってくる者なんて離れて暮らしている両親くらいなものだった。
だけどその両親も、絶大な権力があるわけでもなく、領地もここからかなり遠い。
娘に何が起ころうとも、両親が便りをもらう頃には私は殺されているだろう。
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