第32話

「確かに今のお前は、他の者たちにとって驚異でもなんでもないな。踏み潰そうと思えばいつでも踏み潰せるゴミ虫みたいなものだ。」



「おい、言い過ぎだろ。」



でも、ミルの言うとおりなのかもしれない。うちは上流貴族ではあるけど、皇室を支えるなんて大それたことをできるほど裕福でも賢くもない。



それに、うちの家は他国からやってきてここで繁栄していったいわゆる移民なわけで、名前の通り純粋なこの国の国民でもない。



それでも王妃の候補に上がったのは、皇室も無視はできないほどの貴族である、ということ。そして今私がこうして格別な待遇を受けていられるのは、なぜか周りの候補がすべて、いなくなってしまったからだ。



そう、″なぜか″ね。




「ね、他の候補者たちって。」


「ああ。あの女が排除した。」


「……やっぱり。」



こんなにも分かりやすいことに、当時の私が気づかなかったのは、幼かったのとその、馬鹿な頭のせい。




「マジで、大馬鹿。」


「おお、今ごろ気付いたのか?」


「……むかつくわー。」





不思議そうに首を傾げるミル。私のお付きの侍女のはずなのに、このくつろぎ具合が問題にならないのって、問題じゃないの?




……バイセンからむち打ちの刑でも食らえばいいのに。

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