第25話

すると突然、部屋のドアがノックされた。




「お嬢様、なにか騒がしいですが、どなたかといらっしゃるのですか?」



わ!この声は侍女長の声。自分にも周りにも厳しく、小町家に長年勤めてくれている女性だ。名前はバイセン、年はもう56才くらいかな。



これから9年後の、バイセンが65才の時、彼女は病にかかって亡くなってしまう。


あれだけ温度家のために身も心も捧げてくれていた彼女が育てたも同然の私が焼き殺される光景を見ることにならなくてよかったとは思うけど。



そういえば、私が后候補になった時から、温度家から遣わされた侍女として私を支えてくれていた。




きっと私が、最も信頼できていたのは彼女だけ。他の侍女たちは必ずしも私の味方だとは言いがたかったから。



信頼は、してる。だけど、気を許せるほど彼女は私に甘くはない。




「お嬢様?」


「は、はい!」




部屋の中の光景を見れば、私はパジャマ姿でソファーに寝転がっているし、謎のメイドは床であぐらをかいてパンツを惜しげもなくさらしている。




さっき突然この世に生まれたばかりのこのメイドを、バイセンが知っているはずもなく。




今扉を開けられてしまえば、だらしなくくつろいでいる私と変質者が彼女の目に入ってしまう。

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