第10話

「このままじゃ私はまたあの人の妻になってしまう。だけどまだ決定してない。ということは!」



「ふむ、それを阻止すればいい。安直な考えよのう。」


「は?」




自分以外誰もいなかったはずの部屋。どこからともなくその声は現れた。



「え、え、なにこれ。こわっ。」


「怖いとは失礼な。我のありがたい言葉を前にひれ伏しはせど、そのような失礼な態度を取った者はいないが。」


「え、聞こえる!聞こえるんですけど!マジで怖い!」


「おい、聞いておるのか?」


「いやいや、聞こえるから怖がってるんだって!」




部屋のどこかから聞こえるその声はもはやホラー。なんか耳元で聞こえる時もあればすっごい遠い時もある。こだまのように響くそれに怯えないわけがないでしょう。



「はぁ。仕方がない。」




そう言ったあと、私の目の前になにかが渦巻く。それは骨のようなものになり、血管が通い肉をつけ、そして皮膚を……。



「いやいやいや、マジで怖い!怖いから!」


「……失礼な奴だ。」




こういうのって、できあがった奴がいきなり出てくるとかそんなんじゃないの?見てよそのむき出しの目。怖すぎて笑えてくるんだけど!




「うふふふふ。」


「こわっ。お前の方が怖いぞ!」




抗議する声はようやく私を指差していると分かる程度に見えるようになっている。

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